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AIHにおける免疫異常

 

 AIHの発症に自己免疫反応が関与すると想定されており,免疫異常所見として多くの報告がなされている.自己免疫性肝炎では抗フグロブリン血症,自己抗休の存在よりB細胞機能亢進の存在があると推定される.事実, AIH症例の検討によりB細胞分化誘導能を示すB細胞活性化マーカーである可溶性CD23の血中濃度が高値を示すことが報告されている。

 

 AIHにおける肝細胞障害機序としては現在肝細胞表面に対する自己抗体を介したnon-T細胞を効果細胞とする抗体依存性細胞介在性細胞障害(anti-body-dependent cell mediated cytotoxicity: ADCC)およびT細胞(CD4またはCD8陽性T細胞)によるものが指摘されている.いずれの機序による細胞障害であっても,その発現にはヘルパーT細胞によるヘルプを必要とする.AIH症例の生検肝組織での浸潤リンパ球のT細胞サブセットはCD4陽性T細胞が優位でウイルス肝炎に比しCD4/CD8比が高いことが報告されている。

 

 さらに,肝内浸潤リンパ球から樹立されたT細胞クローンは平均80%以上がCD4陽性を示し,ウイルス肝炎ではCD8が優位である事実と相違が認められている。 さらに,マイトゲン刺激によるサイトカイン産生を検討すると,AIHの肝内浸潤T細胞ではウイルス肝炎に比し,IL一10の産生か亢進しており,これら事実からTh2サブセットがAIHでは優位となっていると考えられる.すなわち, AIHでは炎症の場である肝内のThクローン存在が特徴的であり,このクローンの存在がAIHの病態形式に重要な役割を果たしていると思われる.

 

 一方, AIHでは血沈の亢進, CRP高値などがウイルス性慢性肝炎に比し高頻度で認められる.C型肝炎ウイルス感染の診断が困難であった白己時期に提唱されたわが国の診断基準ではこれらの点に注目し,診断上の副所見として取り扱った経緯もある.実際, AIHの肝組織ではこうした急性炎症にかかわる炎症性サイトカイン, IL 1β, TNFα, IFN- γ,ケモカインなどの発現が高いことも示されてきている.すなわち,IL6を誘導し,急性期蛋白を,IL-1β, TNF-αはプロスタグランジン産生を介して発熱作用を示す.しかし,これらのAIH病態形式における意義についてはまだ不明の点も多く,今後さらなる検討が必要であろう.

 

 免疫学的な肝細胞傷害の引き金となる対応抗原については,従来より,多くの検討が加えられている.当初肝細胞特異抗原として報告されたliver specif-1C protein (LSP)は多数のペプチドを含む肝可溶性分画であり,対応抗原とは言いがたい . LSP分画に含まれるasialo-glycoprotein receptorに対する抗体が自己免疫性肝炎で高率に認められ,かつasialo-glycoprotein receptorは肝に特異的に認められる受容体であることよりAIHの標的抗原として注日された.しかし,この抗体はウイルス肝炎でも陽性を小す場合があり,また,リコンビナント抗原を用いた場合,C型ウイルス肝炎での陽性率がやや高いとの報告もある.戸田らII)は,肝細胞膜不溶性分画に対する抗体が自己免疫性肝炎患者血清中に存在することを示し,その対応抗原がsulfatideであることを明らかにしている.抗Sulfatide抗体の出現はAIHに特異的であるが, sulfatide自体は肝での含量は少なく, sulfatide抗体自体に病因的意義を付加することには困難がある.しかし, sulfatide抗体はヘパリンと交叉反応を示すことから,内皮細則障害を誘導性があることが示されている.

 

 分子免疫学の進歩により,抗原提示とそれに引き続く免疫応答の詳細が分子レベルで明らかにされてきている.内因性抗原物質であれ,外因性抗原物質であれ,抗原としての表出は,細胞内プロテオソームによる蛋自の分解によるペプチド化とHLAの結合が重要である.抗原提示過程に関与する遺伝子としてLMP, TAPなども知られてきている.興味あることに,これら遺伝子はいずれもMHC遺伝子近傍に存在する事実である.抗原提示機構の細胞内プロッセッシンダが遺伝的にも規制されている可能性は,従来検討されてきた方

法論によるAIHに特異的な対応抗原検索の変換を余儀なくさせることとなっている.今後,細胞内プロッセッシングを踏まえたAIHに特異的ななHLA上に表出されたエピトープの同定にむけての検討が重要である.一方,特異抗原を認識するTリンパ球側からの検討も現在進められている.筆者らもAIH症例の生検肝組織から分離した単核球のT細胞受容体のVβレパトアを検討し , AIH発症初期症例では一定のクロナリティーを示すことをシーケンス解析により報告している.しかし,クロナリティーは存在するものの,特定レ

パトアの存在は明確にできていない.興味あることに,経過を観察し得た症例ではレパトアの変化が観察される.この事実は,他の自己免疫疾患でも明らかにされているエピトープの抗原決定基・スプレッディングが , AIHでも生じる可能性を示すとともに,臨床例での特異的対応抗原検索の困難を示しているともいえる.