化学療法

 肝細胞癌抗癌剤に対する感受性が極めて低い癌腫の一つであり,標準的な化学療法は確立されていない.しかしながら実際の臨床上外科的切除, TAE,PEITなど局所療法の適応外の症例に対し施行され,初期治療に占める割合は高率である.また各種局所療法を繰り返し,抵抗性が出現した進行例も多く,肝細胞癌の治療において抗癌剤による化学療法に依存する比率は極めて高い.

 

 使用される抗癌剤としてはadriamycin (ADM), farmorubicin, mito-mycin C (MMC), 5-fluorouracil (5-FU), UFT, cisplatin (CDDP),mitoxantrone (MIT)などである.投与方法の工夫として近年皮下埋込型リサーバーを介して肝動脈内にカテーテルを容易に留置することができ,抗癌剤の理論的な作用機序に則した投与が経動脈的に可能となっている.また本法は抗癌剤の内容によっては外来での動諚療法も可能であり,患者のquality of life (QOL)の向上にも寄与する.

 

 肝細胞癌に対する化学療法の問題点としては,奏功率が極めて低く,単剤全身投与で‘10%弱,肝動注では15~30%程度であり,さらに生命予後の延長に対する寄与も有意なものは報告されていないことが挙げられる.ただし化学療法により奏功が得られた例は,非奏功例に比べ有意に生命予後の改善が得られていることが示され,ここに化学療法によって腫瘍縮小効果を向上させる臨床的意義がある.この観点から肝細胞癌に対する,より効果の高い新しい抗癌剤の開発とともに多剤併用療法の工夫が試みられている.その一つとしてbiochemical modulationの概念と臨床応用がある.これは抗癌剤(effector)の薬理動態を他の薬物(modulator : 抗癌剤でも非抗癌斉りでもよい)により変化させ,抗腫瘍効果の増強や副作用の軽減を図るものであり, effectorとして5-FUを中心に,すでに胃癌,大腸癌,頭頸部癌,乳癌などで検討され良好な成績が報告されている.われわれはこの概念に基づいた療法を高度進行肝細胞癌に対して試みている8).経肝動脈的に, effectorとして5-FU, CDDP,5-FUのmodulatorとしてmethotrexate, CDDP【dua】modulation)を前投与するものである.成績としては奏功率37.5%,奏功例の50%生存期間27ヵ月と良好であり,さらに近年インターフェロンを中心とするサイトカインも各種の抗癌剤の作用を修飾することが報告,注日されており,われわれは肝細胞癌に対してこのインターフェロン併用化学療法の臨床的有形|生の検討を進めている.

 

 肝細胞癌の治療法選択の原則,ならびにそれぞれの治療法の特徴につき概説した.実際の臨床においては肝病態を十分考慮し,肝予備能を極力温存することを念頭とし,.外科的,内科的集学的治療が肝要である.さらに進行した肝細胞癌の生命予後の改善には手術療法を含め各種局所治療法の適応拡大の努力,工夫とともに,より有効な化学療法の出現も必須である.

文  献

 

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