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肝細胞癌:診断と検査

 肝細胞癌はそのほとんどがウイルス性の肝硬変・慢性肝炎を背景として発生するためにハイリスクグループの設定が可能である。 したがって,肝細胞癌の早斯発見にはこれらの患者に対して,系統だった定期的スクリーニングを行うことが重要である. 腹部超音波検査は簡便であり,小結節性病変の発見に重要な役割を果たしている.一方,ヘリカルCTをはじめとした高速CTを用いた造影CTは全肝を動脈優位相で観察可能なため,特に動脈血流の増加している肝細胞癌の検出に優れており,スクリーニングにおけるCTの重要性が高まってきている.腫瘍マーカー検査は容易ではあるが小肝癌での検出率は低い.

 

アビチンービオチン法を用いた高感度PIVKA-II測定法やAFPのレクチン親和性分析が可能となりつつあり,早期診断に対する有用性が期待されている.

 

 これらの画像診断により肝内SOLが発見された場合や腫瘍マーカーの異常変動がみられた場合, MRI,血管造影(digital subtraction angiography :DSA)および血管造影を併用したCTにより精査し,必要ならエコーガイド下に腫瘍生検を行う.

 

治療法選択の原則

 

 肝細胞癌は他の癌腫と異なり,腫瘍の進展度とともに残存肝機能も重要な生命予後因子となる九表1に原発性肝癌取扱い規約で規定される肉眼的進行程度stageおよび臨床病期clinical stageを示した。詳細は規約を参照して頂きたい.この分類に従った治療方針の原則を示した.

 

 stage l あるいはstage IIの単発例においては肝機能が良好(臨床病期)であれば手術を第一選択とし,肝機能不良例(臨床病期IIの一部, III)においてはTAE and/or PE!T (or PMCT)とする. stage IIの多発例, stage IIIおよびstage lVの血管侵襲O例においてはTAE and/or PEIT を,またstage IVの血管侵襲O十)例およびstage IV-B に対しては化学療法(動脈内投与を原則としている)を第一選択としている. stage Ill, IVでかつ肝機能が低下した例(臨床病期mの一部)においては,その生命予後は低下した肝機能に大きく依存し,積極的な治療の適応はないと考えている.

 

 この他,治療法選択にあたり考慮すべき因子として年齢, performance status,癌腫瘤の局在,血管造影時のvascularity,腺腫様過形成の合併の有無などがある.

 

 1.年齢, performance status

 

 比較的若い例(およそ65歳未満)に対しては手術の適応を拡大し,逆に高齢者においては術後のQOLも考慮してTAE and/or PEIT (or PMCT)を原則とする.またperformance statusの悪い例では積極的に治療する意義を検討する必要がある.

 

 2.癌腫瘤の局在

 

 手術, PEIT, PMCTの手技上のアプローチの難易を考慮する.手術の場合,例えば肝表面に位置するものと深部で太い脈管に接して局在するものとでは切除範囲が大きく異なる.したがって単発癌腫において積極的に手術を選択しているが,局在からみて肝機能の温存,手術侵襲,あるいは合併症の出現の可能性を考慮し,適宜適応を拡大,縮小している.またPEIT, PMCTにおいても腫瘤の局在により経皮的な穿刺が困難な部位においてはTAEほかが優先となる.

 

 3.血管造影時のvascularity

 

 肝動脈から血流支配を受ける古典的肝細胞癌にはその性質からTAEが有効であるが,高分化型肝細胞癌ではvascularityが乏しくその効果は期待できず,手術, PEIT, PMCTが選択される.

 

 4.腺腫様過形成合併の有無

 

 腺腫様過形成の一部は前癌病変と考えられていることから,単発・多発の判定においては肝細胞癌に準じて取り扱う必要がある.

 

 PEITを導入した1985年以降にこれらの選択基準により治療した肝細胞癌210例のstage別の生存曲線を示した.3年生存率はstage 1 82.2%, stage 11 53.1%,31.5%, stage IV 17.5%, 5年生存率はそれぞれ68.2%, 46.0%, 16.8%であった.