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 潜在性肝性脳症

 

 潜在性肝性脳症という名称が使われるようになってすでに20年近くが経過した1)。しかし、いまだ、その国際的に共通する概念も確立されておらず、その診断法も暗中模索の状態にあると言わなければならない。

 

 生存期間が著しく延長した肝硬変例にとって、 QOLを考慮した外来管理がますます重要になることが予測され、よりよくマネージし、よりよくケアするために潜在性脳症の考え方を導入することが必要となる。顕性脳症への移行を防止することはもちろん、運転や仕事でのトラブルなど日常生活でのりスクを減らし、また無症状の症例には薬物治療の動悸づけにもなると思われる。

 

 今日、潜在性脳症の定義、病態発生、病型分類、診断法、危険因子、治療、自然史などに関する検討が活発に行われている。その研究分野は消化器(肝臓)病学とはいえ、神経生理学や神経病理学などの基礎医学者はもとより精神科医、神経科医、放射線核医学科医、臨床心理士などとの協力が重要となる。

 

 

 

潜在性脳症の概念

 

 肝硬変例で精神神経状態に問題なしと判断されるにもかかわらず、鋭敏で、定量的な神経機能検査(動作性能力や認知機能)を行うと何らかの精神神経機能に異常がみられる状態を潜在性脳症と呼んでいる。 この際、問題となるのは臨床的に判別しにくいグレード{gradeまたはstage) Iの脳症がこの概念'富山医科薬科大学第3内科学教室の中に含まれるか否かという点である。

 

 これまではグレードIを含めてそれ以上の脳症を臨床的脳症として取り扱ってきた経緯から、グレード1の脳症は潜在性脳症に含めないとする考えが一般的である3)。しかし、わが国の昏睡度分類にも記載され、劇症肝炎の脳症の定義にも含まれるように、グレードIの判定が臨床的に容易でないため、グレードIIを含めそれ以上の脳症を顕性(overt)脳症と呼ばなければならない。したがって、現実的にはグレード0とグレードIを含めて潜在性脳症と呼ぶ考えもある。 欧米では、 minimal・1)(またはearly) encephalopathyという名称が使われることがあり、これにはグレードIの脳症が含まれる。

 

 また、その他に、欧米ではgrade O encephalopathy とgrade l encepha-lopathyを区別することもある。また時には、 low-stage encephalopathy という呼び名が使われることもあるが、これにはグレードIとIIの脳症が含まれる。

 

 Tarterら2)は、@1のように潜在性脳症を定義している。痴呆など精神・神経疾患を除外し、中枢神経作用薬を常用していないことが必要である。なお、肝硬変がなければならないか否かは問題であり、肝硬変はないものの太い門脈一大循環系短絡路をもつことが明らかになれば6)、必ずしも肝硬変の存在は必須な事項とはならない。