劇症肝炎の成因

 劇症肝炎の成因におけるC型の占める割合は少ない.また, GBV-C/HGVの関与に関しても結論が得られていないが,現時点ではその関与は極めて少ないと考えられる。

 

劇症化の機序

 

 劇症肝炎の発生には多くの要因が考えられているが,病理組織学的には急激かつ高度の肝細胞壊死すなわち亜広範性から広範性の肝細胞壊死を認めるものである.これらの肝細胞壊死の機序はいまだに十分に解明されていないが,宿主側の要因とウイルス側の要因に分けて多面的に検討が進められている. 宿主側の要因としては古くから細胞性(Duddley)・液性(Almeida)の免疫過剰反応や類洞内血栓による循環障害4)が指摘されてきた.しかし,当時はこれらの過程を一元的に説明することができず,ことに類洞内血栓の重要性は疑間視された。 しかしながら,近年,サイトカイン,接着因子,免疫担当細胞などによる炎症反応のメカニズムの解明が進み,炎症反応と類洞内皮の障害および類洞内血液凝固が一連の過程として解明され,広範肝細胞壊死の発症に重要な意義を有すると考えられるようになった.すなわち,活性化マクロファージから分泌されるTNF-α、anticoagulant (抗血栓的)な性質を有するはずの血管内皮細胞に組織因子や接着因子を発現させ,procoagulant (血栓的)性質に転換することが明らかにされ,マクロファージの活性化を伴う急性肝不全においても, TNF-αやIL-1が,類洞内凝固を促進して血栓を形成し,微小循環障害による広範肝細胞壊死をきたすことが重要と考えられるようになった6).

 

 一方,ウイルス側の要因としてはこれまで, HBVとHDVをはじめとしたウイルスの重感染が劇症化の要因としてあげられてきた.近年,感染源を同じくすると思われる数例のB型劇症肝炎の発生が相次いで報告されるなど,劇症化を起こしやすい特殊なHBVの感染が原因として注目されている.すなわち,ウイルスの遺伝子変異が原因と考えられるようになり, precore領域, core領域,X遺伝子領域などの特定の部位の変異が劇症化と関連する可能性が指摘されている.

 

診 断

 

 劇症肝炎はほとんどの場合,急性肝炎の劇症化という形で発症するため,急性肝炎の発症初期に劇症化の可能性を念頭に置いて,臨床症状および臨床検査アーク,画像検査所見を注意深く観察し,早期に予知・診断する必要がある.肝炎の劇症化を示唆する所見を示す.特に強い全身倦怠感,黄疸の急激な増強,肝萎縮を示唆する所見(肝濁音界の縮小,超音波,CTなど),血液凝固因子の著明な低下などが重要である.超音波検査,血液凝固検査は簡便でかつ重要な情報が得られることから頻回に行うべきである.

 

 確定診断は,前述の診断基準に基づいて行われる.この基準では,先に定められた定義において,“重篤な肝機能障害”とこれに基づく肝不全症状とされていたものをそれぞれプロトロンビン時間40%以下,肝性昏睡II度以上と具体的に規定している.

 

 現在厚生省の難治性の肝病患調査研究班による全国実態調査においてもこの基準に基づいて集計が行われている.