パーキンソン病ハンチントン病精神分裂病、その他多くの病気は遺伝性のものだと信じられているので、類似の分子(たとえばナノテク)による解決法が、効果があるかもしれない。また、ミルク、卵、チョコレートなどあらゆる種類の食物アレルギーが軽減されるかもしれない。これらの食物を消化する酵素をもたない人がそれを再生産できるようになるからである。ナノテクノロジーによる進歩から得られる情報が、10年以内にこれらの病気の解決法を提供するだろ

 

 毎年アメリカ経済に1100億ドル以上の経費負担をかけている麻薬の乱用、常用もナノテクノロジーによって救済法が出てくるかもしれない。麻薬常用癖は、遺伝因子によって大なり小なりに陥りやすくなると考えられている。ある研究で、酵素CYP2A6の中にある遺伝子に異常をもつ人は二コチンの代謝が遅くなることが発見された。これらの人々が麻薬常用癖にかかりにくいということもわかった。もしナノテクノロジーによりその酵素を複製できるようになれば、喫煙者の数が著しく減って、ヘルスケアへの出費が減る可能性はいうにおよばず、1650億ドルのタバコ産業への影響は信じがたいはど大きい。いままで禁煙できなかった喫煙者もその壁を乗り越えることが可能になるので、タバコ製品の市場は小さくなるだろう。

 

 この10年の終わりに大きなニュースになるのは酵素の研究だけではない。ミシガン大学のナノテクノロジー分野での先導的な研究者であるべ1力1(Jaヨes Baker)は、ナノスケールで含成製造される特異なデンドリマー開発にとりくみ、大きな成果をあげている。ナノスケールで製造される樹枝分岐形状をしたこれらの分子(デンドリマー)は、どんな分岐数のもの(これは異なった分子とナノ粒子を保持するために必要である)でもつくることができる。それは人間の細胞の中に入ることができるほどの大きさである。

 

 最も有用な用途としては、デンドリマーを使って、化学物質を患部のがん細胞まで運んでタグづけし、そのがん細胞を死滅させて取り除くというものがある。デンドリマーを、高度に訓練された軍隊の特殊部隊であると考えるとよい。ある化学物質を目標に結びつくよう特別に変質させ、正しい地点に装置が”上陸”するようにする。第2の化学物質ががん細胞にタグをつけ、主治医にがんの場所を通知する。それは照明弾を発射するようなものである。第3の化学物質が暗殺者の役目をし、がん細胞を死滅させる。第4の物質が無線技師のように、がん細胞が除去されたことを伝える信号を送る、そして第5の化学物質は死滅した細胞を身体の外に流しだす。

 

 このような装置が意味するところは驚愕的である。人間の細胞より小さい、ある一つの装置ががんの治療法を急激に変え、それがさらに進めば、さまざまな医療専門家の仕事をなくし、医療市場の中で重要だった部門を不要にする可能性もある。たとえば、もしがん細胞が早期に見つかって除去されると、高い技術をもつがん専門医の需要は大きく減るだろう。化学療法と放射線がもはや必要なくなると、この分野の専門家は減り、がんの生存者の世話、治療、回復の分野でのビジネスだけでなく、機器を供給する会社もその業務が徐々になくなっていくことになるだろ