ナノテクノロジーヘ投資する場合に考慮すべき三つの要因

 

 投資レベルを決定することは、R&Dに使える資金が予算の中にどれだけあるかとか、最も関心があるのはどの分野かとかいう単純な問題ではない。最終投資決定には多くの要因が影響する。これらの要因から、ある一つだけの要因で決めた場合は、それは最良の結果とはならないだろう。これから以下の三つの要因について説明していく。

1 技術成熟度

2 収入への潜在的影響

3 競争相手の投資

 

技術の成熟度

 

 技術の成熟は、初期の投資決定にだけでなく、さらなる資金投入のタイミングにも影響を与えるだろう。投資、利益、産業化などを糧として、すべての技術は自然にいくつかの段階、すなわち、初期のアイディアから、理解と実用の可能性、改良、製品の生産という過程をたどることになるだろう。

 

 現在成熟の初期段階にある技術に対しては、はとんどの場合、最低レベルの投資が適切であろう。たとえば、もしあなたの会社が生体埋めこみ可能な薬物送達システムを実現できる潜在能力をもっているとして、当面は大学における問発や埋めこみのナノテクノロジーに関する政府の政策を見守る方がよいかもしれない。このやり方では投資・関与のレベルは低く、妥当だろう。なぜなら、埋めこみについてのナノデパイスの技術的な成熟度がいまだ低く、やっと理解されはじめたすばらしいアイディアの域を少し越えた程度だからである。技術成熟度が上がることが確実に予想されるようになれば、投資は時問とともに増加するだろう。技術の変化は予測より早いこが、しかし何をしなければならないのか?とも遅いこともあるので、複数年にわたる投資の戦術には、ある程度の柔軟性が必要である。

 

 時間経過にともなう技術成熟度と投資レベルの関係の例を示す。成熟度の各段階が少しずつ重なっていることに注目してはしい。それは技術の進化の速度に不確実さがあることを示している。これらの重なり合う領域は、投資戦略の中で考慮すべきもので、それを反映した3通りの投資戦略図の下方に実線、破線、点線で示した。

 

 埋めこみ可能な自動薬物送達システムの例で考えてみると、一番上の線は、積極的で大きな投資戦略を行う会社を示しており、この技術が戦略としてとり上げるのにふさわしいものであり、この技術を(たぶん一つ二つの特許を経て)手に入れるために最初からそのような投資をする必要があることを明確にわかっている会社である。図の真ん中の線は、術の成熟度を真剣に似重に見守っている会社を示している。会社が技術の実現性あるいはその適用の対象に懐疑的なので、最初のうちは投資は低調である。技術が成熟するとともに、投資は着実な方法で実行されるがいまだ控え目である。この真ん中の線の会社は、いちばん上の会社のような大きな投資をする会社の開発を利用するだろう。最後に下の線の会社は、図に示した技術成熟度のほとんどの段階で最小の投資しか行わないことを示している。これらは、技術にはあまり興味を示さない会社である。ここの例でいえば、この会社の関心は生体に埋めこまれたデバイスまたは化学薬品を売ることではなく、むしろ自動送達システムから利益を得る可能性のある移植の方に関心があることを示している。おもしろい技術ではあるが、直接的には一部しか会社に利用できないというような場合で、幹部は、いま起こっていることに注目する必要はあるが、技術の主たるプレーヤーまたはオーナーである必要はない。

『ナノテクビジネス指南』小林俊一監訳の著書より