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研究開発への投資

 

 研究開発に費やされる資金は、プロセスの「間発」的局面と現在の市場の区分にあてはまる製品にのみに伝統的に集中してきた。確かに例外もあり、そこではかなりのお金が研究面に費やされてはいる。しかしそれでも多くの研究は、自らのコアコンピタンスを中心になされてきたのは間違いない。ごくまれに、ビタミンサプリメントアロマセラピーのような本筋から離れた産業や市場に研究開発費を費やしている、ホステスのような会社もある。伝統的な食品を、栄養補給剤や味覚を増すための香料によって強化するのも、いまのところ確かにナノテクノロジーを使う一つのケースだろう。人々はツウィンキーをクリームがいっばい詰まっているから買うのではなく、25種類のビタミンやミネラルが十分入ったRDAが入っているから買うことになるかもしれない。しかもホステス社はこれでワンーアーデイ社と競っている。

 

 あなたの会社の伝統的な製品以外のものを見ることによって、現在の製品に対するナノテクノロジーの潜在的なインパクトによりよく準備することができる。これは必ずしも会社が最先端技術のナノテクノロジー研究室をつくらなければならない、ということを意味しない。どのみち初期の研究は、ひと握りの企業、研究者および政府機関で実施され、何百もの研究室で行われるわけではないのである。おそらくこのことはナノテクノロジー開発の場合にもあてはまるだろう。ビジネスの観点から見て、今後変化するのは何であるかをアメリカ企業が見定め、あるレベルでナノテクの基礎研究に参加する必要がある。関与する方法としては、近くの大学のシンポジウムに出席したり、大学との連絡役としてスタッフの1人を従事させることから始める、などが考えられる。実際、これは多くの大学、およびほとんどすべての州で起きていることである。産業界はますます基礎研究プログラムに関与するようになってきている。

 

小さな新興企業ばかりでなく、巨大企業(3M、カーギル(pRΞ)、IBM、ヒューレッド・パッカード(Hewlett-Packard( HP)、メルク(Merck)、ボーイングなど)もナノテクの基礎研究を行っている。大小にかかわらずいずれの会社も、パートナーの大学で間発した技術を利用するばかりでなく、大学と協力することで可能になって、あらゆる学間分野の技術へのアクセスできるという有利さを活用している。

 

 M1T(マサチューセッツエ科大学)テクノロジーレビューによれば、アジレントテクノロジー社とハーバード大学はDNAを分析できるナノサイズの微小な孔をもつ材料に取り組んでいる。エンジーンOs/MITとナノスフィアソースウェスタン大学はともに金のナノ粒子を研究するチームをもっている。前者の研究は生物分子のリモートコントロール、後者の研究はDNAと病原体を検出する検知器についてである。生物分子を認識する方法は、カーボンナノチューブを使うモレキュラーナノシステム社とスタンフォード大学とのチーム、およびナノワイヤを使うナノシス社と(Iバード大学とのチームによって研究されている。

 

 急速な進展に対応するために、なるべく早い対応をとることを推奨したい。非常に多くの専門分野をカバーしなければならないので、きわめて初期の段階から関与した企業に有利となる。参加の形態としては、大学院学生のためへの奨学金給付、会社との共同研究、研究室への関与などが考えられるだろう。早期に関係をつくることによって、産業は特定の基礎的な研究間発努力の成果を利用でき、また場合によってはその分野へ向かうことも可能になる。

 

 分子の相互作用と、相互作用に起因する特性の物理に焦点を合わせているモトローラ社が、この種の研究協力によって国際レベルまでステップアップしたよい例である。モトローラは米国でライス大学と緊密な関係を保ってきたが、一方では、フランスと日本の研究所に人材を有し、各グループはそれぞれ基礎物理のさまざまな側面を研究している。国際的レベルでの知的財産保護に対するモトローラのアプローチについて議論したとき、ゴロンキン博士(モトローラの物理研究所取締役副社長)は、「私たちのアプローチは単純だ。私たちがともに発明したもの、それを私たちは共有する」と述べた。

 

 ナノテクノロジーの基礎研究への参加の先には、いろいろなレベルの付加的な関与の仕方がある。多くの場合、ナノテクノロジーがビジネスにしみこむ初期段階では、投資は少数の専門雑誌の予約購読、あるいは技術者に数時間与えて特定の科学分野の調査をする程度の小さなことであるかもしれない。連邦や私的なセクターによって提供される分野横断的情報サービスへのオンラインアクセスを考えてもよい。技術の進展につれて、多数の会議、開発委員会、ナノテクノロジー分野のエンジニア教育用内部プログラムなどへの投資が増加するだろう。この一連の投資対象の逆の極にあるのは、内部的に、または協力研究機関や会社といっしょになって、技術やその将来性に対して行う資金提供といった有意義な投資の選択肢である。この種の意義ある投資の例としては、IBM、ヒューレットーパッカード、3Mの大規模な研究所がある。問題は、どのように決定し、どのくらい投資するかである。

『ナノテクビジネス指南』小林俊一監訳の著書より