企業と競争相手の力

 

 自分の力を肯定的に見て、競争相手の力を偏見のまなざしで見ることは人の常である。しかしもし競争相手の行っていることに鋭く気づかなければならないときがあるとすれば、それはいまをおいてはかにない。競争相手の投資や協力関係に注意を払う必要がある。彼らはどのタイプの人材を雇い、どの分野に向かおうとしているのか。競争相手の社員が公表する技術論文、それは必ずしも製品と関連しているとは限らないが、これらの専門的論文から競争相手がどの方向へ向かうのか、また志向しているところは何かという見通しを知ることができる。世の中には水平線の向こうにあるものを見抜く有用な見通しを提供してくれる、誰でも利用できる情報がたくさんある。要は、競争相手がのんびり楽しげにいままでと同仁道をたどっていると考えてはならないことである。低価格と優れた技術で、米国以外の企業が従来の米国市場(自動車、テレビ、ラジオなど)を席巻した例は枚挙に暇がない。もし米国企業が技術的な観点から、外国の競争相手に何が起こっているか注日していたら、外国企業の進出によって不意に弱点を突かれることはなかっただろう。B社がいままで常にビタミン事業において競争相手であったからといって、B社が従来手をつけてこなかった傷治療用包帯を盗みれることを計画していない、ということにはならない。ナノテクノロジーを用いることで、他社が新しい、一見無関係に見える市場に参入し、あなたの会社と競合することは、より容易になるだろう。

 

 さらに、あなたは違った角度からより広い視点で、自分の企業の強みを観察する必要がある。従来の市場の枠内での新規ビジネスだけでなく、まったく新しい市場へ向かってどのようにコアコンピタンス(中核となる能力)を活用できるかを子エックする必要がある。あなたは新市場に移行したり、あるいはいまだ存在しない市場を創造するとするとき、すでに経験していることをナノテクイニシアチブにより強化し、それを適用するにはどうすればいいのだろう? たとえば、あなたの会社がビルを塗装するための自動スプレーシステムを生産しているとして、バクテリアを退治する物質を含んだ”塗料”を使用中の部屋の壁に塗るようにするにはこれをどのように修正することができるだろうか? 圧力、塗装された塗料の厚さ、あるいは塗料の容器などの修正が必要だろうか? 塗布される材料の温度の制御は必要だろうか? 自動スプレーシステムが可搬式にできるなら、おそらくそれは市民の緊急セクターや、隔離された場所で活動する軍隊などへ適用できるだろう。あるいはその方法は、現在採用されていない浄化方法を提供する可能性もある。

 

 大きな絵を見ながら、見かけ上関係のないような可能性を積極的に考えてみることは、言うは易し行うは難し、である。求められている変化は、以下の活動によってもたらされる。

 

1 新しい情報を求めてあなたの会社の市場の外側を見ること

 

2 従来の分野以外から専門技術者を引き入れること

 

3 新しく出現しつつある傾向を探すこと

 

4 発展する技術を探るため、社内の研究者・技術者に注意を払うこと

『ナノテクビジネス指南』小林俊一監訳の著書より