人材の採用とコンサルティング

 

 現時点では、ナノテクノロジーの可能性を十分に活用できる包括的知識のある企業や政府機関は一つとして存在しない。大学はいろいろな学部を有しているので、技術的に統含された理想に近いのかもしれない。たとえばあなたの会社は、採用する技術者の専門分野を定めているのではないか。コンピュータハードウェアを製造するなら、システムエンジニア、ソフトウェアエキスパート、電気・電子工学のエンジニアおよびエキスパートを求めるだろう。医療業界であれば、生物学者、装置関係の機械エンジニア、およびバイオ関連のシステムを製造できる知識をもった人材を求めるだろう。しかし市場のあらゆる部分へのナノテクノロジーの導入に伴って、これらの区分けは非常にあいまいなものになる。たとえば、コンピュータ会社は分子をコンピュータに利用することを始めようとするなら、(従来のシリコンベースのエレクトロニクスに対して)生物学者が必要となるだろう。医療機器会社は、原子レベルで生物学的相互作用を予測しモデル化するために、コンピュータシミュレーションのエキスパートを必要とする可能性がある。バイオと電子システムを融合させるナノテクノロジーの力によって、ヘルスケア会社は本来のバイオの知識に加えて、電気工学的専門知識必要とすることに気づくだろう。

 

 ナノテクノロジーの多分野性と、不連続性のために、現在のところはかなり明確に区分けされている学間分野を融合することが求められるだろう。これによってまったく新しい専門家を生み出すことになるだろう。ちょうどエレクトロニクス、ソフトウェア、その他の分野の組み合わせから進化したコンピューターエンジニアリングと同じように、ナノ技術者が多くの分野の組みあわせから生まれるだろう。たとえば、ナノ生物工学官anobioengineering) の学位をとろうとする者には、分子生物学、電気工学およびコンピュータキテクチュアの教育訓練が要求され、その結果、分子コンピューテイングの専門家が生まれることになろう。ナノ材料技術者は、機械工学、量子物理学およびナノ材料製造方法を勉強し、航空機製造会社のナノ開発分野に従事することもある。

 

 この必要とされる技術分野と人材を融合するのは、簡単ではない。各分野はその分野ごとに専門の用語、間発、間題解決へのアプローチをもっている。そのため、自社の製品、利益のために、多分野にまたかる人材を効果的に活用することはもちろん、各分野や人材を融合させて相乗効果を引き出すことのできる優秀なリーダーが必要である。考えられる方法としては、役員同席の内部セミナーを催し、そこでさまざまな技術的分野とその活動について議論を行わせ、あるいは会社内部の会合に外部からのゲストスピーカーの参加を依頼する、などがあげられる。部門間の議論を支援し、新しい技術的な領域と専門知識への道を開放するのは幹部の仕事だろう。さまざまなアイディアを追求することを奨励する習慣は、技術的な機会に最量の評価を与えるために、大事に育成されなければならない。しかし、電気工学出身の幹部にとって、たとえば生物学との関連を理解することはなかなか難しい。往々にして未知のことに対し、正当性を理解するより一蹴するほうが簡単である。しかし、幹部が優秀であれば、自ら先頭に立って洞察力をもって質問し、新しいアイディアや分野への関心を示し、ナノテクノロジーがもたらす利得を収穫することもできるだろう。

 

 多くの会社が、技術開発および分野が複含する技術の間題に取り組むために、研究機関と強い関係をもっている。たとえばミネソタ州では、ミネソタ大学のナノテクノロジーイニシアチブ(新規構想)と、少なくとも六つの企業が協力関係にある。研究の内容についてはあとで触れるが、この糖の協力の派生的な利点は、会社が在学中にいっしょに働き特有の技術を身につけたその大学の学生を、優先的に採用できるということである。この協力関係により、最先端技術の研究に携わっている社員と同様に、資格を有し豊富な知識と潜在能力をもつ人材を、社員として採用できるということになる。

 

 前向き志向の会社は、将来に必要となる人材を準備しておきたいと考えるだろう。ナノテクノロジーの技術的な広範さと、その分野横断的な性質の2点を考え、教育機関は教育プログラムを修正し増強する必要があるだろう。産業側は将来の技術要員にとって必要なカリキュラムやガイダンスを開発するため、これらの機関と密接にかかわり合って作業することにより、教育に対して価値のある支援を提供することができる。あなたの会社がいまできることの一つは、大学の学部長たちを集め、カリキュラムの開発を会社がどう支援できるかを洗いだすことによって、あなたが関心があることをその分野の教育機関にわからせることである。別のアイディアは、最近卒業して入社した社員と対話し、専門的な職業に対する準備としてカリキュラムをどのように改善したらよいか、彼らから意見を聞くことである。

 

 コンサルタントの利用の仕方もまた変わるだろう。今日ほとんどの場含、雇った技術コンサルタントは、会社の得意分野または領域についての知識はもっている。しかしコンピュータ会社が製品間発の支援に生物学者を雇っていることはまずまれである。ところがナノテクノロジーの到来で、もはやそういうわけにはいかなくなってきている。あなたは賢明な幹部として、ナノテクノロジー自体、製品、および市場へのその影響を理解する第一ステップは、生物学者を雇いソフトウェアエンジニアと交流させる前に、無関係な分野のコンサルタントを外部から招き入れ、企業の研究間発に参画してもらい、それをかき回してもらうことである、と判断することだろう。

『ナノテクビジネス指南』小林俊一監訳の著書より