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『睡眠時無呼吸』

 扁桃肥大にともなう無呼吸現象は、古典的には1892年Osierらにより報告され、その後1976年Guilleminaultらにより睡眠時無呼吸症候群として詳細な報告がなされた。当初はまれな病態と考えられていたが、次第に小児ではよくみられるものであり、死因としても重要であることが明らかとなった。睡眠時無呼吸は呼吸中枢の機能異常、肥満、アデノイド、扁桃肥大などのさまざまな要因が関与して発症する。睡眠畤無呼吸が持続すると、慢性的な低酸素血症、高炭酸ガス血症が起こり、多血症、肺高血圧症、右心不全などを引き起こす。小児と成人では睡眠時無呼吸の病像は明らかな相違がみられる。睡眠時無呼吸は発症機序により中枢型、閉塞型、混合型の3つの型に分類される。


1)中枢型睡眠時無呼吸

 中枢型睡眠時無呼吸は、延髄の呼吸中枢の機能障害による呼吸調節の異常と考えられている。胸腹部の呼吸運動が消失するとともに鼻腔および口腔からの気流が停止する。脳幹部の血栓症、腫瘍、脳炎、頭部外傷などの中枢神経系疾患が本症の原因と考えられている。原因不明のものとして原発性肺胞低換気症候群(オンディーヌの呪い)がある。


2)閉塞型睡眠時無呼吸

 閉塞型睡眠時無呼吸は、胸腹部の呼吸運動があるにもかかわらず、上気道の閉塞が起こるために鼻腔および口腔からの気流が停止するものである。日常診療で経験するものの多くは、アデノイド増殖症と扁桃肥大による閉塞型睡眠時無呼吸である。そのほか、鼻閉、肥満、小顎症、頭蓋顔面奇形、低緊張(ダウン症など)なども原因となる。


3)混合型睡眠時無呼吸

 混合型は始めは中枢型の無呼吸を示すが、呼吸運動は再開しても次第に上気道閉塞により換気が得られない閉塞型に移行するものである。ピックウィッグ症候群は高度の肥満、傾眠傾向、周期性呼吸などを主徴とするが、肥満にともなう上気道狭窄による閉塞型睡眠時無呼吸と、慢性の経過にともなう呼吸中枢の二酸化炭素に対する反応の低下による中枢型無呼吸の合併した混合型睡眠時無呼吸と考えられている。


1……診断

1)臨床症状:同居家族からの病歴聴取が重要である。閉塞型では睡眠中の激しいいびき、異常行動、頻回の覚醒、夜尿、無呼吸、あえぎ呼吸、寝起きが悪い、昼間の過眠などを認める。

2)ポリソムノグラフ:換気気流、胸部・腹部の呼吸運動、脳波、心電図、筋電図、眼電図、経皮酸素、二酸化炭素モニター、パルスオキシメーターなどを用いて夜間睡眠中の連続モニタリングを行うことにより確定診断を行う。

 実際的には呼吸モニター、パルスオキシメーターにより酸素飽和度の低下をともなう無呼吸を確認することが大切である。

3) MRI:脳幹部から脊髄にかけての異常の有無に注意する。

4)心電図、心エコー検査:肺高血圧、右心不全の有無などを評価する。

5)閉塞型睡眠時無呼吸では、鼻咽頭内視鏡検査、頸部側面気道撮影などの耳鼻科的な精査が必要である。


2……治療

1)扁桃肥大、アデノイド増殖症がある場合は外科的摘除が第一選択となる。

2)肥満を認める場合は体重減少をはかる。

3)薬物療法:ネオフイリン0、塩酸ドキサプラムなどが試みられるが、有効性は明らかではない。

4) Nasal CPAP : 成人領域では有用とされている。年少児では不快感から協力が得られず、実施が難しい。

5)気管切開、その他の手術療法。

6)中枢型睡眠時無呼吸では根本的治療法はなく、睡眠時の機械的人工換気療法が主体となっている。

重要ポイント

○小児において閉塞型睡眠時無呼吸はまれな疾患ではない。成長障害、学習障害、行動異常などの発育と精神発達に悪影響を及ぼし、さらに低酸素血症により肺性心、右心不全など生命にかかわる重篤な合併症を引き起こすこともある。きわめて注意を要する病態であることを理解する。


入院治療中の観察のポイント

○睡眠時の呼吸状態(いびき、無呼吸、呼吸障害など)、異常運動の有無などを注意深く観察する。

○枕の使用を中止したり、睡眠時の体位の工夫などを行うことも重要である。

睡眠薬・鎮静剤などの使用により症状が増悪することがあり注意を要する。