小児の頻脈・除脈・不整脈

 小児の不整脈は、頻脈や徐脈を含めて「不整脈」として扱っている。小児の脈拍数は年齢とともに変化するだけでなく、子供の状態によっても変動する。小児心電図専門委員会のスクリーニング基準では、頻脈については、3~5歳では150/分以上、6~11歳では140/分以上、12~18歳では130/分以上とし、徐脈については、3~5歳では60/分未満、6~11歳では50/分未満、12~18歳では45/分未満としている。

 小児の不整脈の特徴は、器質的心疾患に基づくものは少なく、原因不明で予後が比較的良いものが多いことである。しかし、突然死の原因となるものや内科的コントロールが困難なものかおり、また手術成績の向上により術後不整脈の問題も次第に大きな比重を占めるようになってきた。

 不整脈を理解するには、刺激伝導系を理解しておく必要がある。

 心臓の最初のペースメーカーは洞結節で、そこから発生した刺激は、心房筋内を伝わり房室結節に達する(心電図のPQに相当する)。房室結節を通過すると、ヒス束から右脚枝・左脚枝に分かれ、最後にプルキンエ線維に到達して心室筋全般を興奮させ、心室収縮が起こる(心電図のQRSに相当する)。その後回復過程に入り、心室筋の弛緩が起こり、次の収縮に備える(心電図のTに相当する)。房室結節までの異常で起きる不整脈を上室性、それ以降の異常で起きるものを心室性と区分する。この刺激伝導系のどの部位が原因で不整脈が起きているかを心電図で判断し、管理・治療の方針を立てることが重要である。

 わが国の児童・生徒の心臓検診において、不整脈の頻度は1~2%とされるが、治療が必要な不整脈はそのうちの数%以下ではないかと考えられる。しかし、基礎に心疾患が存在する場合には不整脈の頻度が高く、治療が必要となるものが多いので、器質的心疾患の有無の診断は特に重要である。

 小児の不整脈は症状をともなうことが少ないが、特有な症状としては、動悸、胸痛、失神、さらには心不全にともなう症状などであろう。しかし、不整脈の診断・治療には、心電図の記録と判読が必須である。


1)頻脈

 河陸頻脈で注意しなければならないのは、甲状腺機能亢進症である。

 発作性上室性頻拍は突然に発症し、動悸を訴えたり、顔色不良、嘔吐をともなったりする。息こらえや顔面冷却で発作が終了してしまうことがある。頻拍が持続する場合は、発作の種類に応じて、アデホス、ワソラン、インデラルなどの静注が行われる。発作が止まれば、一般的には予防内服が行われる。最近では、発作を繰り返す例には、カテーテルで副伝導路を焼灼遮断する方法(アプレーション)力1行われる。

 心房細動はふ児ではまれであるが、1:1伝導となると300/分以上の高頻拍になり、意識を失ったり、突然死したりすることがある。一般的には直流通電(カウンターショック)で粗動を停止させた後、ジギタリス剤内服などで再発を予防する。

 心室頻拍のなかで、心拍数が200/分以上、血圧低下などのショック症状をともなうもの、 QRS波形が変化するものは、心室細動に移行する危険性が高いので、リドカイン静注や直流通電を行う。


2)徐脈

 小児期では、洞性徐脈で問題になることはほとんどない。

 徐脈のなかでもっとも多いのは、完全房室ブロックである。心疾患のない先天性完全房室ブロックは、すでに胎児期から気づかれていることもある。幼児期まで症状がでることは少ないが、アダムズ・ストークス発作を起こしたり運動耐容能が低下しか場合には、ペースメーカー植え込みの適応となる。先天性心疾患にともなうものは、しばしば心不全の原因となり、ペースメーカー植え込みが必要となる。後天性のものは、心筋炎とか心臓手術後に発生したものが大部分である。前者は急性期を乗り切ると回復する可能性があるが、後者はほとんどの例がペースメーカー植え込みの適応となる。


3)脈の乱れ(不整)をみるもの

 小児では、洞性不整脈はほとんどは呼吸性で、吸気で増加し、呼気で減少する。病的意義はない。

 単なる期外収縮は、上室性にしろ、心室性にしろよくみられる。連発せず形が一定で、運動で増加せず、基礎心疾患がなければまず治療の対象とはならない。II度房室ブロックはほとんどウェンケバッハ型で、問題となることは少ない。

 洞不全症候群は、一般には頻脈と徐脈が混在しており、しばしば長い洞停止のためにアダムズ・ストークス発作をきたす。原則としてペースメーカーの適応となるが、頻拍発作をみれば、頻拍に対する薬物療法を併用する。


入院時の病歴聴取のポイント

家族歴で、心疾患(特に突然死)の方がいないかどうかについて、詳しく問診する。

胸痛、動悸などの胸部症状以外に、失神、痙攣発作の有無についても聴取する。

基礎心疾患の有無、心臓手術を受けていればその内容と術後経過についても聴取する。


観察のポイント

不整脈はいつ起こるか分からないので、心電図モニターを装着し、不整脈が出現したり、何らかの症状が見られたら心電図を記録する。

不整脈を発見したら、患児の全身状態を迅速にチェックして、緊急性の有無を判断する。


管理指導のポイント
不整脈が出現したら、緊急度に応じて処置が開始されると考えて、電気徐細動器、各種抗不整脈薬、救急薬品、緊急ヘーシンクなどに対応できるように準備する。

○抗不整脈薬は、重大な副作用が起こりうるので、充分に説明して服薬指導を行う。一方、急に中止すると危険なこともあることをよく理解してもらうことも重要である。