気管支喘息を徹底解説


 気管支喘息の本体は、「気管支平滑筋の収縮による気道狭窄」と考えられていた。そうだとすれば気管支拡張剤がよく効き、非発作時には気管支は正常、すなわち可逆性が保たれているはずである。ところが実際には、気管支拡張剤だけでは改善しない症例が多くあり、非発作時でも呼吸機能が低下していたり、好酸球由来の蛋白(ECP)が高値を示す症例があることがわかってきた。

 そこで最近では、「アレルギー性の炎症とそれによる気道過敏性」が本体であり、必ずしも可逆的ではないと考えられるようになった。気管支粘膜のアレルゲン侵入箇所には、リンパ球、好酸球などの炎症細胞が集まり、それらの細胞がアレルギー性炎症を増幅させてゆく結果、気管支喘息の病像(気道分泌物増加、気管支平滑筋収縮、血管透過性亢進による気道閉塞のため、喘鳴や呼吸困難という症状がでる)ができあがる。すなわち、


1)アレルゲン(アレルギーを起こす物質)は、抗原提示細胞による処理を受けたのちリンパ球の中のT細胞に情報が伝達される。これを受けたT細胞はTh2タイプのT細胞に分化し、(別のリンパ球のグループである)B細胞に抗原特異的lgEをつくらせる。この抗原特異的lgEは肥満細胞上に結合している。


2)侵入したアレルゲンが肥満細胞上のlgEと結合すると、肥満細胞からケミカルメディエーターとサイトカインが分泌される。このケミカルメディエーターには、ヒスタミン、 LTs (ロイコトルエン)、 PAF(血小板活性化因子)などがあり、これらが気管支平滑筋の収縮、血管透過性の亢進による気管支壁の浮腫、気道分泌物の増加を起こし、即時型の喘息反応が起こる。


3)また、肥満細胞から分泌されたサイトカインは、近くの血管壁に接着分子を発現させる。

4)血管の中を流れている炎症細胞(リンパ球、好酸球、好中球、好塩基球)は、細胞表面上の分子と血管壁の接着分子が結合することにより、血管の外、気管支粘膜下に出てくる。              
5)このようにして集まってきた好酸球から、ロイコトルエンやPAFがさらに分泌されるので遅発型喘息反応が起こってくる。また好酸球からは、組織傷害性の非常に強い蛋白質であるMBP、 ECP、 EPOが分泌され、気管支粘膜上皮を剥離させる。こうして露出した末梢知覚神経は、今度はアレルゲン以外の種々の刺激を受けて、軸索反射を介して神経ペプチドによる喘息発作を起こすようになる。

6)このように、アレルギー性の炎症とはアレルゲンの侵入で始まり、T細胞の活性化、サイトカインの産生、ケミカルメディエーターの放出、接着分子の発現、好酸球の集積、組織障害性蛋白質の放出、ニューロペプチドの分泌などの連鎖反応の結果起こってくる現象である。


1……診断

 3度以上喘鳴を繰り返せば、まず気管支喘息と診断してよい。乳幼児では、細気管支炎、マイコプラズマ感染症、肺炎クラミジア感染症でも喘鳴を生じる。したがって、初回喘鳴では気管支喘息と区別ができないので注意が必要である。まれに、上気道・下気道の狭窄を生じる疾患で、気管支喘息と鑑別が困難な疾患がある。以下の事柄を参考にしながら診断する。

 ①家族歴にアレルギー疾患がある
 ②末梢血好酸球増多(発作中はむしろ減少)
 ③lgE値高値、ハウスダストやダニなどのRAST値高値
 ④発作時呼吸機能低下、β、受容体刺激剤吸入で呼吸機能の上昇
 ⑤胸部X線写真で気腫状


2……台療

 予防的治療と急性発作の治療に分かれるが、別々に独立して存在するのではなく、つねに並行して行われるべきである。アレルギー性炎症を抑える作用と気管支拡張(気管支平滑筋弛緩)作用を有する薬剤とを組み合わせて治療する。

 

予防的治療

1〕環境整備

 アレルゲン除去対策を徹底的に行う。ダユ、ハウスダストがアレルゲンになっている場合、掃除機を使ってしっかりと掃除をする。寝室は毎日、その他の場所は週に2~3回、20秒/m2の時間をかけて掃除機をかける。布団はできるだけ毎日乾かし、週に1回はシーツ、カバーをはずし掃除機をかける。年に1回の大掃除を復活させる。

2)鍛練

 皮膚、からだ、心の鍛練に普段から心がける。

3)薬剤の予防投与
 ①徐放性テオフィリン製剤の継続投与(RTC療法)
 ②DSCG (クロモグリク酸ナトリウム、インタール)の定期吸入
 ③DSCG十β一受容体刺激剤の定期吸入     
 ④吸入用副腎皮質ステロイド剤の定期吸入

2 急性発作の治療

 ①酸素:パルスオキシメーターによるモニタリングが不可欠。 Spo2 96 %以上が正常。 95%以下では酸素吸入が必要。

 ②β、受容体刺激剤(気管支拡張作用+++、抗炎症作用-)の投与。

 ③テオフィリン製剤(気管支拡張作用++、抗炎症作用+):血中濃度モニクリンプをして、有効血中濃度8~15μg/mlに保つ。嘔気・嘔吐・興奮などの副作用出現に注意して、けいれん・心停止などの重篤な副作用を未然に妨ぐ。


 ④副腎皮質ステロイド剤(気管支拡張作用-、抗炎症作用+++):発作強度の場合は点滴のような全身投与が必要になるが、維持療法として吸入ステロイド(BDI)を用いる。吸入のやり方を充分説明しておく。
 
 ⑤DSCG(クロモグリク酸+トリウム、インクールO)(気管支拡張作用-、抗炎症作用++)

重症症例では、心因の関与についての配慮・対策が必要な場合かおる。

気管支喘息には、急性疾患(呼吸困難、救急治療)としての側面と、慢性疾患(生活指導・環境整備、予防治療)としての側面がある。

急性疾患としては、急性発作としての治療が必要で、ほとんどの場合救急処置を要する。中発作以上、あるいは初診時に酸素飽和度(Spo2)が96%未満であれば入院治療が必要となる場合が多い。合併症として肺炎(2歳以+では45%)、エアーリーク(気胸、縦隔気腫、皮下気腫)がある。胸痛を訴える症例では、タッピングは禁忌であり、胸部X線写真で工アーリークの有無を確かめる必要がある。 Spo2が90%以+であれば、動脈血ガス分析が必要である。

看護上、発作強度の評価がもっとも重要である。 Spo2、呼吸状態(呼吸補助筋を使用しているかどうか)、聴診所見、呼吸数、脈拍、呼吸機能(FEVlf PEF、 V50)のモニタリングとそのアセスメントを繰り返し行う。自覚症状(呼吸困難感)だけに頼ると、発作強度の評価を誤ることが多い。治療効果が不充分であれば、すぐにでも治療を強化せねばならない。入院治療を開始した場合、治療開始3時間の時点で改善がみられていなければ治療強化が必要である。また、うまく排痰させたり、うまく吸入させることが非常に大切である。

患者教育・生活指導が重要である。特に、家庭での発作時の対応の仕方、吸入療法の仕方、喘息日記やピークフローメーターによるモニタリング、ダニ対策についてはよく説明する必要がある。