小児の白血病と悪性リンパ腫:非ホジキンリンパ腫

白血病

 わが国の小児癌の約40%を占める、もっとも多い悪性新生物である。小児の白血病は97%が急性である。残りは慢性白血病であるがここでは急性型についてのみ述べる。急性白血病の約

80%が急性リンパ性白血病(ALL)、残りが急性非リンパ性白血病(ANL。うち多くが、急性骨髄性白血病

 〈AML〉)。ALLは2~5歳に多く、ANLLでは、各年齢で発生率はあまり変わらない。

悪性リンパ腫

 非ホジキンリンパ腫(NHL)とホジキンリンパ腫(HL)に分けられ、約9:1でNHLが多い。小児悪性腫瘍のなかでは白血病、脳腫瘍、神経芽細胞腫についで多く、悪性腫瘍

体の7~8%を占める。

1……診断

白血病

1)症状

 貧血症状、感染徴候、出血傾向が種々の組み合わせでみられ、発熱、骨痛、肝脾腫、リンパ節腫大をともなうこともある。

2)検査所見

 末梢血、骨髄での白血病細胞を形態的・免疫学的マーカーで確認して確定診断とする。形態はFAB分類に基づき、 ALLではLI、 L2、 L3の3種類に、 AMLではMO(微分化性)、 Ml・M2(骨

髄芽球性)、 M3 (前骨髄球性)、 M4 (骨髄単球性)、 M5 (単球性)、 M6 (赤芽球性)、 M7 (巨核球性)の8種類に分ける。免疫学的には、B細胞系、T細胞系、骨髄系に分類する。
ガンマグロブリン製剤やT細胞受容体遺伝子の再構成の解析も役立つ。白血病に関連した染色体異常や特異的遺伝子異常もその診断・予後判定に有益となる。

 

非ホジキンリンパ腫(NHL)

1)症状

 腹部、頭頸部、縦隔などの無痛性腫瘤が多い。

2)検査所見

 確定診断は組織診断。組織診断の分類は多種な方法があるが、小児では基本的に、 lymphoblastic型(30~40%)、 small non-cleaved cell型(バーキット型を含む、35~50%)、 diffuse

large cell型(15~25%)の3種類である。表面マーカーなどの免疫学的検査も行う。 lymphoblastic型は頭頸部・縦隔に発疱しやすく、T細胞型が多い。 small non-cleaved cell 型は腹

部に発症しやすく、B細胞型が多い。病期の決定には、胸部・腹部単純X線写真、骨髄検査、脳脊髄液細胞診、 CT、シンチグラフィーが必要である。

 

ホジキンリンパ腫(HL)

1)症状

 頸部、腋窩、鼠径部などの無齎隍リンパ節増大。縦隔発症では、咳や呼吸困難の合併もみられることがある。約1/3の患者では微熱、倦怠感、盗汗などをもつ。

2)検査所見

 組織診ではリード・ステルンペルブ細胞の存在が鍵である。組織型は4種類に大別される。

 ①結節硬化型:もっとも頻度が高く、小児では約50%、思春期に限れば70%がこの型である。

 ②混合細胞型:2番目に多く、約40%を占める。この型では通常、進行病期に節外型で発見されることが多い。

 ③リンパ球優位型: 10~20%にみられ、男児に多く、予後は比較的良い。

 ④リンパ球減少型:もっとも頻度は少ない(10%未満)が、もっとも予後不良な型。免疫不全症にともなう場合はこの型が多く、骨髄浸潤しやすい。

2……治療

白血病

1) ALLの治療(乳児を除く)

 発病時の年齢、白血球数、免疫学的マーカー、遺伝子染色体解析の結果から、3~4種類の危険群に分けて治療を組むのが一般的である。化学療法は、寛解導入療法、中枢神経白血病

予防法、強化療法、維持療法の三期に大別される。全治療期間は1~3年くらいである。寛解導入療法では、ビンクリスチン、プレドニソロン、アスパラギナーゼ、ダウノルビシンなど

を併用し、95~98%に寛解が得られる。中枢神経白血病予防法は、メトトレキサート、ヒドロコルチゾン、シクラビンの三者髄注と頭蓋放射線照射によるが、標準危険群や10歳以下では

晩期の知能発達や内分泌障害を考慮して、後者は極力避ける。強化療法では寛解導入療法薬剤に加え、シタラビン、エトポシド、シクロホスファミドなどを組み合わせて投与する。維持療

法では、代謝拮抗剤のメトトレキサートとメルカプトプリンを中心に、1~2年投与する。造血幹細胞移植は、高度危険群や再発例に考慮される。

2) AMLの治療(乳児を除く)

 急性前骨髄性白血病以外は、一括して同じ化学療法を施行することが多い。寛解導入療法にはシクラビンとアンスラサイクリン、エトポシドが基本で、70~85%の導入成功率になって

いる。寛解導入療法とそれに続く強化療法で骨髄抑制が充分強力ならば、長期の維持療法は重要でないという意見が多い。急性前骨髄性白血病では上記の薬剤に加え、レチノイン酸によ

る分化誘導療法を組み合わせる。中枢神経白血病予防はALLと同じ方法をとる。造血幹細胞移植は、第一寛解期に試みられることもある。

3)乳児白血病の治療

 年長児の白血病と同様にALLとAMLに大別されるが、11番染色体q23の部位(11q23)に切断点がある転座の有無によって治療法を分けるのが一般的である。 11q23転座がない場合は

ALLの治療様式を強化し、 llq23転座がある場合はAMLの治療様式とし、可能な限り造血幹細胞移植を行う。

4)予後

 化学療法により、 ALLでは60~70%、 AMLでは40~50%が5年無病生存するようになった。 AMLでは初回寛解期の同種骨髄移植により、約60%の長期生存率が得られている。

 ALLの予後不良因子としては、1歳未満または10歳以上、初診時白血球数5万/y以上、中枢神経浸潤あり、肝脾腫あり、 LDH高値、 FAB分類でのL2、 L3、特殊な染色体異常などがあげら

れる。 AMLの予後不良因子は、初診時白血球数10万/μ/以上、 FAB分類でのM1(アウエル小体なし)、特殊   な染色体異常などである。        

非ホジキンリンパ腫(NHL)     

1)治療

 病期(限局型、進行型)と表面マーカー(T細胞型、B細胞型、Kiリンパ腫型)により治療方法が異なる。 B-NHLはシクロホスファミド、メトトレキサートを中心に、短期間に大量投与

することが一般的である。さらに、ビンクリスチン、副腎皮質ステロイド、アスパラギナーゼを投与する。 T-NHLは、高危険群ALLに準じた治療をすることが多い。

2)予後

 病期I、 II期(限局型)については3年無病生存率は90%を越え、病期Ill、 IV期(進行型)については約70%である。シクロホスファミド、メトトレキサート大量療法導入後、 B NHLの

予後は改善し、進行型でも2年生存率が90% (中枢神経浸潤例では70%)となった。

 

ホジキンリンパ腫(HL)

1)治療

 化学療法、放射線療法ともに感受性が高い。化学療法では、 MOPP (ナイトロジェンマスタード、オンコビンプレドニゾロン、プロカルバジッ)、ABvD(アドリアマイシン、ブレ

オマイシン、ビンクリスチッ、ダカルバジン)などの多剤併用療法が一般的である。進行型では、20~25 Gyの局所放射線療法を追加する。

2)予後

 病期I、 IIでは90%以上が化学療法のみで完治する。また、化学療法と放射線療法の組み合わせにより、病期mでは75~90%、病期Ivでは、60~85%が治癒するようになった。

入院時の観察のポイント

o出血症状、貧血の程度、感染の徴候を把握する。

o家族の疾患に対する理解の程度を把握する。疾患の予後に関連して、家族の悲しみや不安については訴えやすい人間関係をつくり、医師、看護婦、家族の全員で患者を治していくこと

を説明する。担当看護婦を1~2人決定するほうがよい。

入院治療中の観察のポイント

o頻回の処置・検査(点滴、採血、骨髄検査、脊髄腔内注射)に関連する苦痛・恐怖がある。処置前には励ましの言葉を、処置後にはねぎらいの言葉をかける。できる限り、苦痛を取り

除く処置(充分な局所麻酔、場合によっては短時間作用性の静脈麻酔)をして過剰な不安を与えない。脊髄腔内注射の前後のバイクルサインには必ず注意する。

o治療の副作用について充分理解して観察し、異常の早期発見に努める。また、出血傾向、感染徴候にも注意する。

化学療法にともなう骨髄抑制によって、顆粒球減少、血小板減少をきたす。

顆粒球減少時の発熱や、重篤な出血症状をきたし場合は、すみやかに医師に連絡する。また、白血球数、血小板数の推移については、常に把握しておく。

O長期入院に関連する問題点を知り、対処する。

 ①日常生活:日課表をつくり、規則正しい生活習慣が送れるようにする。治療の合間に外泊をもうけ、ストレスを発散させる。

 ②余暇:レクリエーションは大切な息抜きになる。例えば、豆まき、ひな祭、七夕、運動会、クリスマスなどの年中行事を病棟内のプレイルームで行い、誕生日には本人の部屋で簡単

なお祝いをする。子供たちは看護婦の演ずる劇を楽しみ、ゲームにはしゃぎ、家族は子供の笑顔に喜びを感じる。                          

 ③学習:年齢に応じて、絵遊びなどを取り入れる。学童においては学習の遅れが心配な場合が多い。特殊教育養護学校や小学校特殊学級(院内学級)を利用し、教育を受ける。また、院

内学級などを通して(子どもの)社会活動とつながりをもつことは、患児の精神的な支えやはげみにもなる。

 ④家族全体の協力体制:患児への付き添いや家事、幼少の兄弟姉妹がいる場合はその世話などが、家族の協力のもとになされているかに留意する。長期の入院に関連して家庭内に不和

が生じる場合もある。