抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)の診断と治療


 種々の原因により抗利尿ホルモン(ADHまたはAVP)が不適切に持続的に分泌されるために、循環血漿量が増大して低浸透圧性低Na血症を起こす。原因として以下のものがあげられる。

 ①悪性腫瘍(肺癌、膵癌など。異所性にADHを産生するため)。

 ②中枢神経疾患(脳腫瘍、髄膜炎、頭部外傷など。下垂体後葉に異常なADH分泌刺激が加わるため)。

 ③肺疾患(肺炎、肺結核など。肺血行動態や胸腔内圧の変化によってADH分泌が刺激されるため)。

 ④薬剤性(ビンクリスチン、クロルプロパミドなど。機序はさまざま)。

 症状は低Na血症による中枢神経症状が主で、倦怠感や嘔気に始まり、重症例では脳浮腫による全身痙攣や昏睡にいたることもある。近年、夜尿症に対して抗利尿ホルモン(デスモプレシン)の点鼻療法が行われることがあるが、その際過剰投与によって本症と同様の病態が出現することがあるため注意したい。


1……診断

抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)
低浸透圧性低Na血症(130mEq/ /以下)
尿中Na排泄の持続(20mEq//以上)
尿浸透圧>血漿浸透圧
脱水、浮腫がない
腎機能、副腎機能が正常
血漿浸透圧に対して血漿ADHが相対的に高値
 

2……治療

 ADHの異常な分泌をきたしている基礎疾患の治療が根本であるが、同時に低Na血症の治療を行わなくてはならない。治療の第一は水分制限である。Na摂取は維持量でよく、通常2~3日で血清Naは回復する。ただし、中枢神経症状がみられるなど重症の場合は、高張食塩水の輸液が必要である。この場合、血清Naの補正が急速すぎると、脳橋部脱髄変化により意識障害や死を招くことがある。


水分出納の把握が重要であり、水分摂取量および尿量を正確に測定し記録する。

治療の基本は水分制限であるため、患児・家族にその意味を充分説明して納得させ、医師の指示した水分摂取量を守らせる。

高張食塩水の輸液中は点滴速度の管理が重要で、急速補正による意識障害を招かないよう細心の注意が必要である。