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2つの肥満手術:ルー・ワイ胃バイパス術、胆すい路変更術

ルー・ワイ胃バイパス術(Roux en Y Gastric bypass)

アメリカで広く行われている手術法です。体重の減少効果が確実で、かつ、手術によって臓器を切り取ることがないため、副作用が比較的少ないなどの特徴があります。ちなみに日本で広く行われている胃がんの手術の際にも、同じような技術が使われることがあります。

まず胃を上下二つに切り分けます。これにより胃は「小さな胃袋」と「大きな胃袋」に分けられますが、実際に消化に使うのは小さな胃袋だけで、大きな胃袋は使いません。こうして胃袋を小さくすることにより、少量の食べ物でも満腹感が得られるようになります。

ところが、胃を小さくしただけでは不都合があります。消化物の出口がないのです。食べ物は胃でどろどろに消化された後、小腸へ流れ、そこで栄養として吸収されます。しかし胃から小腸へつながる出口は大きな胃袋のほうにあるため、このままでは小腸へと消化物を送ることができません。

そこで小腸を途中で切り取り、その一部を小さな胃袋につなぎ合わせます。その結果、小さな胃袋に入った食べ物は小腸に誘導され、栄養を吸収できるようになります。

切り分けられた小腸の一部には消化物が流れません。いわば食べ物がショートカットします。そのため栄養の吸収が悪くなるのです。

ルー・ワイ胃バイパス術は、このように食べ物の「消化-吸収」の流れを変えます。その結果、体重が減少します。

なお、もはや食べ物が通らなくなった大きな胃袋と小腸の一部は無駄なもののようですが、そうではありません。というのも、この部分には胆のうやすい臓などの臓器がつながっているからです。

もしこれらの部分を切り取ってしまうと、それらの臓器から出る胆汁や膵液などの消化液が行き場を失います。そこで食べ物が通らなくなった小腸の出口を、胃につなげたほうの小腸につなぎ、消化液が流れるようにします。

なお大きな胃袋を残すことにはデメリットもあります。胃の病気(胃がんや胃潰瘍など)の精密検査は通常、カメラ(内視鏡)を口から食道を経由して入れて調べます。しかし手術によって大きな胃袋は食道とつながらなくなるため、カメラを入れられなくなります。そのため胃がんなどの発見が遅くなる危険があると指摘されています。

胆すい路変更術(Biliopancreatic diversion)

この手術は、体重の減量や2型糖尿病への効果が非常に高いことで知られています。『NEJM』の論文によると、この手術を受けた人のなんと95%が薬なしで血糖値を正常に保てるようになりました(胃バイパス手術は75%)。ただし胃バイパス手術と違い、臓器の一部を完全に切り取ってしまうなど体への負担が大きいです。また、栄養の吸収がとても制限されるため、手術後に栄養障害になりやすいです。そのためこの手術は、非常に肥満した人(BMI50以上など)を主な対象として行われています。

胃バイパス手術との大きな違いは、胃の切り分け方です。胃を縦に切り分けます。

さらに小腸を、長い部分と短い部分の2つに分けます。そして短いほう(大腸側)をチューブ状の胃の出口につなぎます。長いほうの小腸は、バイパス手術と同じように、消化液が流れるための道として残しますが、大きい胃袋は取り除いてしまいます。

残された小腸の長さは、ルー・ワイ胃バイパス手術に比べても短くなります。そのため、減量効果が高くなると考えられています。