ランナーズハイの幸福感を調査:脳内大麻様分子(エンドカンナビノイド)がエクササイズ依存症を引き起こす


ボン大学のヘニング・ベッカー博士らは、脳スキャナーを使って脊髄穿刺なしで脳のオピオイド濃度を測定すればランナーズハイの研究が行えることに気づきました。ベッカー博士らは、ランナーズハイを経験したと話しているアマチュアの長距離ランナー10人を集めました。一人ずつ、すべての種類の内因性オピオイドの分泌を測定できる放射性薬物を使って平常状態の脳をスキャンし、同時にその時の気分を調査しました。次に2時間のランニングと30分のクールダウンの後、同じように脳のスキャンと気分調査を行いました。

その結果、長時間のランニングは、脳内、特に前頭全皮質と全帯状皮質と島のオピオイドの増加と関連することがわかりました。また、最も強い幸福感を報告した被験者群で、オピオイド放出レベルが最も高くなりました。

この研究は、最初の足掛かりとしては意味深いですが、まだ残されている課題は多いです。有望な方向としては、オピオイド受容体の種類を絞り込めるプローブを用いて、ランナーズハイに関連する内因性オピオイドを特定することでしょう。次に、それらの受容体をブロックする薬物を投与して、ランナーズハイが弱まるかどうかを見ます。

オピオイド以外の脳内物質がランナーズハイを媒介している可能性もあります。運動は、血中のエンドカンナビノイド(脳内に存在する天然の大麻様分子)の濃度を上げることも知られています。容易に脳関門を通過しないβエンドルフィンと異なり、エンドカンナビノイドは体内にも循環しています。つまり、運動で血中のエンドカンナビノイド濃度が上昇するとき、おそらく脳内のエンドカンナビノイド濃度も同じように上昇しており、これがランナーズハイの多幸感につながっている可能性もあります。断片的な情報をつなぎ合わせてみましょう。激しい運動が短時間の多幸感をもたらし、不安を軽減し、痛みの閾値を高めることは確かです。同時に脳内のオピオイド濃度と、おそらくエンドカンナビノイド濃度も高まります。いずれも上述の効果を精神に及ぼしうる分子です。また、エンドカンナビノイドとオピオイドは間接的にVTAのドーパミンニューロンを活性化させ、したがって内側前脳快感回路を刺激することもわかっています。エクササイズでも依存症が起こりうること、また、依存症を引き起こすそのほかの物質や行動は一般にVTAの標的領域でドーパミン放出を高めることも、わかっています。ラットが回転車を回し続けていると、側坐核をはじめとするVTA標的領域でドーパミンが放出されます。ラットを訓練して、回し車を回すという報酬を得るために重労働をさせることもできます。このラットはエクササイズ依存症の兆候を示しているといえます。