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孤独感の測定法:寂しがり屋の原因となる遺伝子

自分が孤独感の強い人間なのか、あるいは孤独を感じない人間なのかを知るにはどうしたらいいのでしょう。孤独感を測るには、ダン・ラッセルが発案したUCLA孤独感スケールという質問紙がもっとも一般的に用いられています。これは、自己申告で質問に答えるだけのシンプルな方法ですが、心理実験や認知神経科学の実験で幅広く用いられています。UCLA孤独感スケールを日本語に翻訳したものもあるので、気になる人は自分の孤独感を測ってみるのもいいでしょう。原文が英語であることや、日本人と英語圏で生活する人の間で質問の受け止め方に文化差があることから、多少正確な数字は変わってくるかもしれませんが、アメリカの学生の平均スコアは40点ぐらいだそうです。

UCLA孤独感スケールが測っているのは、自分が社会的に孤立しているかどうかという側面があるものの、主に自分が他人との関係をどう感じているかというとこに焦点を置いた質問が中心となっています。1日何人の友達とどれくらい交流するかなどは、客観的データとしてとらえることができますが、個人が主観的にどう他人との関係を感じているかが孤独感の指標としては重要です。

孤独感が進化の過程で生まれてきた感覚だということから、何らかの生物学的基盤があることが予想されます。オランダのドレット・ポームスマの双子の研究から、孤独感も個人の性格の一部として半分は遺伝的要素で決定されていることがわかりました。このような個人差の遺伝的要因を突き止める研究では一般に一卵性双生児と二卵性双生児を比較することで行われます。一卵性双生児は遺伝的に100パーセント同一であるのに対し、二卵性双生児は50パーセントの遺伝子を共有しています。両者の間での環境の影響は同等であるという過程の下で、一卵性双生児のペアの孤独感が、二卵性双生児のペアよりも類似していれば、その違いは遺伝的な要因によるものだと考えられます。

このような双子研究では遺伝的要素が個人の孤独感の違いをある程度決定しているということはわかりますが、それが具体的にどのような遺伝子なのかというところまではわかりません。今後の研究で孤独感を決定する遺伝子とそれが脳の発達にどのような影響を及ぼしているのかがわかってくるでしょう。少なくとも、孤独感に遺伝性があるということから、生まれつき孤独を感じやすい人とそれほど感じない人がいるということがわかります。一歩踏み込むと、孤独感というものが一時的な個人の置かれた状況だけで決まるのではなく、脳の何らかの構造の違いによるものではないかということが推測されます。「脳構造解析VBN」を行うことで、孤独感の強い個人にどのような脳構造の違いがあるかが明らかになるかもしれません。

孤独を感じている人とそうでない人で、刺激に対する脳の反応の仕方が違うことも知られています。fMRIの実験で、男が人を殴っている写真のような社会的に不快な状況を見た時に、孤独感の強い被験者では側頭頭頂接合部という脳部位の活動が、孤独でない被験者と比べて低くなります。側頭頭頂接合部は、他人の視点から物を見るという能力に関係していると考えられており、孤独感が強まると他人の気持ちを理解する能力が落ちるのではないかと解釈できます。

一方で、社会的に微笑ましい状況(たとえば犬を散歩させている幸せそうな写真)を見ると、腹側線条体という社会的報酬とかかわる部位が活動しますが、孤独感の強い人ではその活動が低くなります。つまり他人の幸福に対して、あまり喜ばしいと感じることができないのではないかと想像させられます。

ただし、社会的な状況とは無関係な単純な快・不快な写真(ゴキブリの写真やお金の写真など)を見せられても反応の大きさは変わりませんでした。この実験から孤独感が強まると、他社と共感することが苦手になり、ますます他人と仲良くやっていくことが難しくなるのではないかと推測されます。このため、孤独感が強いと他人に冷たく接するようになりがちで、さらに孤立してしまう傾向があります。